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仕事と恋愛は人を成長させるのか

六条綾

 仕事と恋愛は人を成長させるのか。

 この質問に対しては、何だかんだと理由をつけて「イエス」と回答するのが良いとされている風潮がある。むろん、この言葉には幾分かの真実が含まれており、仕事や恋愛が人を成長させる要素を含んでいることは間違いないだろう。

 同時に、人を成長させる唯一の手段が仕事(恋愛)である、というわけでもない。新鮮味のないことを言って申し訳ないが、どういったことに対しても取り組み方によって成長するチャンスがあるだろうし、成長せずに漫然とやり過ごすこともできるだろう。

 もちろん、経験によって成長度の高い低いはあるだろう。だが、仕事や恋愛がとりわけ効率が良い方法であるというわけでもないだろう。少なくとも、十分に検討された最も効率の良い方法であるという根拠はどこにもない。私が寡聞にして知らないだけかもしれないが、成長論者のなかで明確に根拠を示すことができる人物には出会ったことがない。

 では、どうして仕事や恋愛と成長が結び付けられるのか。

 それは仕事や恋愛が少なからずつらいものであることと関係している。人間は自分がつらかった経験を「つらかっただけの経験」として受け入れたくはないものである。そこで仕事や恋愛という経験を「つらかったけれども自分を成長させてくれた」という物語で加工して、受け入れやすくしているのだ。

 これが仕事や恋愛が必要以上に成長と結び付けられている理由である。まあ、お前ら、涙拭けよ。

 

 執筆者:六条綾

(c)午前3時の六条会